塾録

第六回 長期投資塾

2018年5月17日 さわかみ投信(株)会議室

澤上龍副塾長

今日は実験をしてみたい。
まずは各十数名で二つのグループをつくる。
そしてそれぞれの顔が見えるよう座ってもらいたい。
塾長、副塾長はそれぞれのグループへ。

本塾の初期の頃、投資と芸術、それと審美眼などを話しあった。
そしてそれと同じくらい話題に挙がったのが、良い会社というワードだ。
今日は、それぞれのグループで、良い会社とは何かということを議論してもらいたい。

ルールは以下の通り。
・良い会社について塾長・副塾長に提案をする(質問ではない)。
・良い会社の提案においては、今後の実体経済、社会などを考慮すること。
・提案は早い者勝ち、順不同。
・他の塾生の提案について、意見を述べる。

塾長・副塾長は、塾生の提案の輪郭がぼやけてきたら、厳しい突っ込みを。
方向性が違うと思ったら即座に却下を。
その提案は終わり、次の提案は? と。

なお、良い会社の定義付けは不要。
強いて言うなら、投資したくらい良い会社ということ。
具体的な企業名でも、架空の会社でも問題なし。

では今から25分間、はじめ。

グループワーク

澤上龍副塾長

25分経ったので、塾長、副塾長はグループを移動し継続。

はい25分、時間。
合計50分の中で、塾長・副塾長に提案できた塾生は挙手を・・・半分か。
では、提案できた塾生の中で、塾長・副塾長は納得してくれたか?

塾生:僭越ながら、良いといってもらえた。
塾生:曖昧で具体性がないと却下された。
塾生:提案したが、なぜその会社は成長しないのかと却下された。
塾生:空想だと却下された。

途中、塾長と副塾長が入れ替わったが、思考や意識、展開が変わったか?

塾生:塾生同士の議論になってしまった。
副塾長:それは、塾長または副塾長が興味を示さなかったから?
塾生:塾長は内容を重視し、副塾長は具体的な商品・サービスを議論した。
塾生:議論の質が違った。

さて、今日何を行ったか理解できる塾生は?

塾生:盛り上がり・・・?

盛り上がったの結構・・・しかし今日行ったのは運用会議。
本日、大暴落到来のチャンス・・。
・アナリストとしてファンドマネージャーに何を提案するか・・・その疑似体験。
本塾の目的は、長期投資家を目指すこと。
常々、塾長や副塾長から考えろ、考えろと言われて半年。
そして今日は、考えたことを行動する日だった。

2001年9月11日、米国同時多発テロが起こり、翌日は大変だった。
そして翌日は突如、行動する日となった。
具体的にこの会社に投資してくれ、と。
常日頃から考えているがゆえに、翌日は即行動ができた。

議論の末に、良い会社の定義付けをすることも本塾では大切。
しかし投資の本質は行動。
自分の考えに自信を持ち、かつ勝負する覚悟を備えた状態。
その状態を保つこともまた、本塾で養うべき内容だと思う。

それぞれのグループで議論の質が違ったという意見があった。
しかしそれは当たり前。
今日、塾生には二つのファンドのアナリストになってもらった。

陥ることは、バイサイドのアナリストはファンドマネージャーからの納得を求めてしまうこと。
セルサイドアナリストは、外部顧客への情報提供のため違う。
バイサイドは、ファンドマネージャーに採用してもらわないと意味がないと考えてしまう。
しかしそれは違う。
ファンドマネージャーに気に入られるよりも、自分のロジックが通るかどうかがポイント。

本塾の目的である、世界で通用するアクティブファンドマネージャーになること。
つまりグループでいくら議論を重ねても、結果につながらなければ顧客に逃げられる。
よって最終的に、ファンドは一つの答えを導き出さないといけない。
もし塾生自身がファンドマネージャーで、他の塾生の意見を採用する立場だったら?
他の塾生の提案が、投資判断として十分かどうかということも考えないといけない。

藤野英人副塾長

冒頭、本ディスカッションの目的が分からなかったが、二回目で100%理解した。
その後は、塾生の提案を真剣に受ける会議体として臨んだ。

運用会議は、今ある時間で買う・買わないを判断するのが重要で遊びではない。
具体的に何をするか・・・買うか、持ち続けるか、売るかの選択肢しかない。
その根拠に、良い会社とは何かという考えが脈々と流れて居る必要がある。

顧客のお金を扱う以上、真剣に取り組まなければならない。
過去が良くても、重要なのは未来。
未来志向で、競合などと比較しながら、世の中のことも踏まえて。

澤上篤人塾長

ほとんど発言していない・・・もっとアナリストとして鍛えたいという気持ちが先行。
塾生の提案は浅く、思い付きの段階、そして摑みもない。
個人で面白がるのではなく、世の中が面白いと思わないといけない。
良い会社といっても、世の中が認めないとビジネスにならない。
良い会社とは、世の中を巻き込みながらビジネスをつくっていきところ・・・その視点がない。
その根拠に、良い会社とは何かという考えが脈々と流れている必要がある。

塾後の懇親会風景