塾録

第四回 長期投資塾

2018年2月15日 さわかみ投信(株)会議室

レポート結果により、塾生数がだいぶ減った。
残った塾生、そうでない塾生に大差はなく、我々が共に学びたいかという視点。
新しいステージの幕開けに、再度一人ずつ自己紹介を願いたい。

塾生自己紹介

総勢25名が名前、仕事、入塾の想いなどを語った。

・ 資産運用会社に勤め、さわかみやひふみとはライバル・・・ファンドマネージャーになりたく。
・ 貿易関係に従事、社会人一年目・・・投資を学びたい。
・ 航空業界と畑違い・・・投資の心構えを身に着けたい。
・ 金融機関にて市場調査、経済分析を行う・・・短期視点という本職の問題を解決したい。
・ マーケット報道・・・長期投資を担う人々がどう育つかを追いかけたい。
・ 病院や介護施設の組織コンサル・・・様々な人が集う会で出会いを求めたい。
・ 物事の見方を長期視野にしていき、また他では出会いな人との接点を作りたい。
・ ファンドマネージャー・・・日本を代表するファンドにしたい。
・ IT企業から独立して会社経営・・・良い会社の模索、実施を試みたい。
・ システムから金融機関の財務に転職・・・個人投資家としての腕を磨きたい。
・ 塾長たちの著書で投資と出会った・・・未来へのワクワク感に気づき、それを深堀したい。
・ 投資は素人・・・自身の成長と目利き力と高めたい。
・ 茶道具屋と農業と二足の草鞋・・・深い考え、生き方を学びたい。
・ 商社で与信管理・・・経営するバイタリティがないと実感、投資する側に回りたい。
・ 元証券営業、販売主体にジレンマを感じ退職・・・楽しく生きることを模索したい。
・ 個人投資家・・・企業を陰で支える投資家、同じ志を持つ投資課を増やしたい。
・ メーカーで予算審査・・・数字を作ることはしたが、読み取ることを学びたい。
・ 金融システムに従事・・・頭だけでなく、手足を動かしながら投資をしたい。
・ 企業経営者・・・生涯事業家を続けるにあたり、投資家がどう見ているか知りたい。
・ OL兼学生・・・お金がお金を生む楽しさを皆を巻き込んで学んでいきたい。
・ ナレーター・・・考えることがナレーターの仕事にも生かせると思っている。
・ デジタル領域のコンサル・・・優れた投資家になりたい。
・ 保険コンサル・・・保険、投資のあり方を学び、世の中を変えていきたい。
・ 公務員として条文を作成・・・自分の夢を疑似体験できるような投資がしたい。
・ 専業投資家・・・竹田和平のような幸せな投資家になりたい。

藤野英人副塾長

塾生選抜後の第二ステージ第一回を務める・・・相応しいテーマがある。

マーケット下がったが、投資家としてどう受け止めるか・・・テーマは変動。
ウルトラ経営者の永守氏の経営交代・・・カリスマ経営者の引退をどう判断。

まずは一人で考え、次にグループでまとめてもらいたい。

塾生発表

・マーケット変動については色々と意見が出た。

実際に売った者も買った者もいた・・・頭が真っ白になったという者も。
企業を信用して買うのが長期投資だとするならば、正解はわからない。

・日本電産の世代交代について、ラーメン屋に例えて考えた。

味が変わるならどうだろうか?
日本電産についても事業内容が変わるとか、挑戦心がなくなるかを考えるべき。

・マーケット変動には視点の違いで答えが変わる。

個人投資家としてみるか、事業としてみるか。
予測してキャッシュポジションを取れれば問題ないが、どう取るか。
長期投資は長期保有ではなく、長期の視点で売買を繰り返すこと。

・創業社長の引退は不確実性の際たるもので、どちらに動くか分からない。

今回の件は、マーケットのタイミングを見たのかと考え得る。

・今回の下げはシステムトレードの影響があったと思う。

そこに大きな買いを入れてあげれば、恐怖心を取り除く効果があるのでは。
それも長期投資家の役割・・・だからこそ長期目線で企業判断をすることが必要。

・カリスマ経営者が変わることについて、一人で業績を伸ばした会社かが重要。

働いている人に哲学が浸透し、企業文化が形成されているかどうかを見たい。

・マーケットが下がったのはチャンス、リーマンショックとは性質が違う。

・カリスマ経営者がいなくなっても、企業価値が維持するかが重要。

財務、経営者の顔、色々と見る必要がある。
同じカリスマの孫正義さんと比較しても、日本電産は製造業という継続の強みがありそう。

・変動とは人の不安を煽ることで起こるが、投資家は事業の本質をみるべき。

そのために心構えが必要、そしてゆとりがあれば対応もできる。

・経営者というファクターは重要なので、交代の影響度合いはみるべき。

また後継者を応援できるかどうか、企業文化は変わらないか。
理念は変わり得るので、細かく見るべきだろう。

藤野英人副塾長

まず、皆が日本電産の株を持っているとしよう。
その場合、どう行動するか。

①明日買いたい
②明日売りたい
③何もしない

この判断をすることが運用である。
では、3つの選択肢に挙手してもらいたい。

①②が少数で、③が大半・・・買いと売りなら売りが若干多いか。
ということは、これがマーケットであれば株価は明日下がる。

運用はマーケットの反応に判断する。
正解はなく、長期投資家としてどう捉えるか。
仮に正解があり、変動に定義があり、暗記すべき方程式があったら?
マーケットなどない。

それぞれの人生観が必要。
塾長、副塾長の我々がマーケットに対し意見しないのは、言っても意味がないから。
審美眼を磨いたり、常に考えろと言ってるのは、それこそが成功法である儲ける方法だから。
精神論ではない。

儲かることは社会に必要であり、社会に役立って儲かることを伝授したい。

グループディスカッションは一般論が多かった・・・間違いとは言わない。
しかし人の意見をメモしても仕方がない。
自身で考え、何が一番しっくりくるかを見つけてほしい。

株価の二面性について。

株価はついている限り正しい。
株価は常に間違っている。

テーマである変動について・・・まずマーケットに敬意を払うべき。
マーケットを信じられなければ投資などできない。
したがって株価がいる限り、それは正しい。

一方で株価は実体価値と一致していることはない。
上か下か、似たところにある。
したがって株価は常に間違っている。

どういう意味で企業に対し株価がつけられているのかを考える。
長期的な価値なのか、技術やブランド価値か、経営力か。

いけない考え方は、上か下かを正しいと思いすぎること。
例えば経営者の場合、株価が下がっていると落ち込む。
自身の評価が下がっていると。

一方で株価を無視する人もいる。
あるべき株価は30万円だ・・・現在は千円だけど。
株価からのメッセージに耳を傾けないのも間違っている。

株価の二面性、二つのメッセージをどう聞くかが大事。
聞くというと感性の話のように聞こえるが、芸術、人生観、科学も反映されている。
そのあたりが理解できれば、投資のレベルは非常に上がると思う。

澤上篤人塾長

皆、真面目に考えて議論しすぎだ。
残念だけど、長期投資家としては失格。
2~3年で大きく変わると思うが、まずなぜ失格か考えてもらいたい。

今日のテーマである下げについて、皆、現象を捉えようとしている。
現象は本来、継続の中にある・・・上がっていたから下がる。
上がり続けるなら底上げという。
上昇中の暴落とダラダラした中での底割れは違う、対応の仕方も。

日本電産についても、今日の発表という現象に捉われすぎている。
もし投資家として買っているなら、どういう意味で、どういうスパンで買ったのか。
継続の部分を考えないといけない。
投資した相手は永守さんなのか、日本電産なのか。

長期投資には時間軸が大切、その中に個々の現象がある。
今日は皆、藤野副塾長に上手く騙された。

しかし皆、いずれわかると思う。

澤上龍副塾長

皆の評論ではなく、自身の考えについて。

人間は永久に生きられない・・・経営者の引退もいつか必ず来る。
長期投資はそれも含め考え行動する。

日本電産の場合は、下がって買いたかったら買うだけのこと。
現象に対し行動するのが長期投資ではない。
準備していたら現象という機会が来たというかたちである。

マーケットの変動も同じ、個別企業が買いたい水準に来たら買うだけ。
本来は、マーケットにリスクマネーを供給したい。
が、小さい存在であればマーケットにすべて吸収されてしまう。
投資家としては、マーケットを客観視するだけでなく、良い意味で関係者になりたい。

今日のテーマである日本電産。
皆、明日の動向は見るが、3週間後には忘れてしまっているはず。
せっかくのテーマであるので、引き続きウォッチしてもらいたい。
自身の今日の判断が、将来どうなっていくのかを見届けてほしい。

藤野英人副塾長

マーケットについて塾長の言の通り、ひっかけ問題である。
長期軸の中のイベントに捉われすぎないでほしいということ。

永守さんの代替わりは、彼なりの優しさだと思う。
マーケットの下落を狙ったのは、自信があるから。
マーケットの上昇時では、新社長の存在とは別に下落リスクがある。
そうではなく、下落時にバトンを渡したのは余計なノイズを排除したのではないか。

塾後の懇親会風景