2017年10月19日 さわかみ投信(株)会議室
設立趣意:澤上篤人塾長
日本あるいは世界を動かすために長期投資と武器となる。
その長期投資をグイグイと実践していけるような人材を輩出することが当塾の目的。
単なる投資運用の手法ではなく、将来に向けて良い社会をつくっていきたい。
そのためにお金にも働いてもらわないといけない。
だからこそ夢を持ち、また10年先を見通せる力が必要になる。
当塾は厳しく、本気で進めていく。
現在塾生が100名近くいるが、回を重ねていく過程で減っていくと思う。
塾生を落とすことが目的ではなく、レベルを上げていくことが肝要。
塾についてくるためには努力が必要、仮に落とされても再挑戦すればよい。
我々は将来の大きな結果を求めて進めなければならない。
だからこそ考える力をトコトン鍛える場としよう。
第0回 塾長副塾長からの最初のプレゼンテーション
澤上篤人塾長
長期投資は今を語るものではなく、常に時間を意識して考えるものだ。
長期投資家も企業経営者も同じだが、10年先の出来上がりをイメージし今を行動する。
種をまいても実がなるまで時間がかかるが、種をまかないと実はならない。
だから行動ありきなのだ。
現在から見て将来はすべて可能性であり、後ろはすべて過去である。
過去を振り返るのは客観であり戯言になりかねない。
対して将来は主観、まだ見えないものに向けどう動いていくか・・・それは夢は想いだ。
例えばコンサルティングは物事を体系化して説明をするが、所詮近未来のことだ。
長期投資はもっと先を見据え行動する・・・説明は出来なくても確信がある。
時間軸の長さが一般の人と長期投資家あるいは企業経営者との違いだ。
現在を議論しても意味がなく、それは長期投資ではない。
将来を考え行動するに高尚な結果も低俗な結果もあり得る。
そこには目線の高さ、美意識、品格、責任感が求められる。
儲かればよいではなく、社会をつくろうと考えるからこそ常に行動が問われる。
将来をつくるために具体的に考えビジョンを持つ。
そのために歴史などを学ばないと具体的に将来を考えられない。
将来どのように行動するか、大きなストラクチャーを構想すべき。
それらの積み重ねが行動につながる。
前を向いて明るく、頭を磨きこむ。
塾生がどのような職種・分野でも構わない・・・皆がそのような考え方を実践してほしい。
将来が見えない、閉塞感があるというが、将来とは見えないもの。
だからこそどうしたいか、自分の頭で考え行動する。
長期投資家も企業経営者も将来をつくっていくもの。
その後ろを、学者先生が体系化・理論化してくれるのが常だ。
藤野英人副塾長
日本に本物のアクティブ投資家をつくる。
塾生の中にはプロとして運用している者もいれば、まったく経験のない主婦もいよう。
金儲けをしたい人もいるだろう・・・それが悪いとかどうというわけではない。
しかしどうやって金を稼ぐか・・・その稼ぎ方が重要である。
何をもって良い運用者とするか考えたい。
私達の投資運用手法をただ学んでも仕方がない。
当塾で本質的な考え方を学んでほしい。
投資運用のメソッドは役に立たない・・・自ら見出したものでない限り。
本物の長期投資家になるために。
長く投資すれば儲かるわけではない。
優れない企業に投資をしても儲からないし社会も豊かにならない。
お金を預かってする運用では、きちんとリターンを返す必要がある。
そのために本質的に良いものに投資をする。
本質的に良いものとは。
それを見極める力が必要。
儲かっている企業は概ね良い企業だが、それは結果論である。
良いビジネスをするから儲かる。
本質的に良いものは価値が継続する。
儲かっているだけならラッキーということもある。
社会変化で変わってしまうようでは仕方がない。
本質的に良いもの、人、人生、社会、すべて突き詰めて考える。
どういう世界になったらよいだろうか、個人ならどう生きていこうか。
どうあったら良い家族となろうか。
組織だったらどう社員と付き合えば良くなるだろうか・・・深く考えるべき。
長期投資を突き詰めていくと、結果的に人間・社会について学ぶこととなる。
考えが浅いほど結果的に利益は出ないし、持続成長しない。
良き社会人であること、良き仲間であること、時に芸術や文化、音楽も必要。
審美眼を持ち美しさを自らで感じるのだ。
良い運用者は文学、音楽、美術に詳しいし、他何らかの趣味を持つ。
人間とは何か、最近ワクワクした小説は、最近の映画は、音楽は。
何が美しいのか・・・自分で感覚を持つ。
勉強は甘いものじゃない。
どうすれば端的に儲かるか・・・当塾では意味のないことだ。
投資家が行う、または支援する芸術活動にピンとこないなら投資のセンスがない。
投資と芸術は直結する関係だ。
例えば古墳の研究をし、自己実現できたというのもよい。
本質ではつながっている。
株を買って株を売る、利ザヤを稼ぐ・・・長期投資ではまったく役に立たない。
何が美しいか、どう社会を豊かにするか・・・それが大切。
私の自慢は、これまで周りの人間を強敵にしてきたことだ。
現在、教え子があちこちで活躍している。
しかし教え子には何も教えていない。
朝の会議で好きなことを話させ、後は何をしてもいいと伝えていた。
本人が必要だと思うことをしてほしいし、アレコレ調べろとは言わない。
最初は楽だが、半年もすると本人が成長しているのかがわからなくなる。
評価されているのか不安になる。
そこから本人の成長が始まる。
教えてしまったらコピーでしかなく、劣化コピーは私達以上にはなれない。
だから教えない。
当塾では何も教えてくれないと思うかもしれないが、それこそが長期投資家を育てる道。
ハートとハードワーク・・・長時間労働ではなく、精神を張り詰めた状態のこと。
塾生の皆が伸び、良き強敵となれば日本自体が強くなるはずだ。
澤上龍副塾長
世界に通用するアクティブ運用者を輩出したいという目的が当塾にある。
現在、世界ではインデックスを含め機械的な運用が主流となってきている。
しかしいつか社会は本格的な投資家や運用者を求めることとなろう。
その時に現状の果てで誰がそれを担うのか、担えるのか。
だからこそ塾生と共に励んでいきたい。
運用者とは預かるお金を増やし続けるのが職務。
株式、債券、投資対象は何でもよいが、リスクをとってリターンを狙うことに尽きる。
しかし考えてみたい。
投資対象の価格変動を捉えるといっても・・・実は株式だけが他と違うことがある。
株式には意思がある。
債券や為替、不動産など他のものにはない。
なぜなら株式は人の集合体であり、自らの意思で価値を上げられるからだ。
他のものの価格変動は需給である。
短期的には株式も需給で価格変動をするが、長期では必ず価値に帰属する。
自らの意思で価値を上げ続けられるのは、株式、つまり企業であり人である。
運用者を育てるといっても当塾のタイトルは長期投資。
用いて運ぶ運用だけでなく、資本を投ずる心構えが必要だ。
塾生の皆は今日は電車で来たはずだ。
あいにくの雨だからこそ電車そして傘があってよかったと思っているだろう。
しかし電車も傘もすべて企業から供給されたもの。
我々は生活するうえで企業の供給を必要としている。
企業は我々生活者の消費で成り立っている。
今持っている水も企業が供給してくれなければ井戸を掘るしかない。
株式投資とは情報を駆使して儲けることだと思われがちである。
しかし社会には将来を豊かにしようと努力する企業が存在している。
投資される企業の立場になって考えてみたい。
投資家は企業を株式、つまり価格変動するものと捉えがちだ。
しかし本質的に投資とは企業のオーナーになることである。
企業から見て、オーナーが自分たちをもの扱いするとどうだろうか。
それよりも自分達が生み出そうとしている商品・サービスの行く先を応援してくれたら。
投資は、投資家とその顧客だけで成り立っているのではない。
目の前にいる企業とも一緒に歩むべきものだ。
だから投資に際しては、投資される側である企業の立場を理解すべきだ。
利益の出ない時期もあろうが、その先に成長の確信を持てるなら企業を支えてみよう。
投資家が自分のことだけを考えていたら、企業の成長を阻害する可能性につながる。
逆に長期で支えるならば、企業は将来に向け努力するだろう。
将来、企業が生む商品・サービスを我々生活者が購入するのだ。
それが企業の売上となり業績も改善、株価も上がる。
当塾では長期投資家、企業と一緒に歩める人材を輩出したい。
そうすればもっと早く理想の社会に近づくだろう。
インデックス中心の投資は虚構である。
事業家が事業リスクをとるなら、投資家が投資リスクをとらないといけない。
リスクはすべて将来への可能性を指しているのだ。
自らの美意識に従える、リスクをとれる投資家が育ってほしい。
共に将来の夢を語れるような人材が増えてほしいと願う。
設立趣意等に対する質疑応答
Q:美意識や芸術と投資の関連性が見えないが?
A:それは自分で考えてみよ。
Q:長期投資は10年先を見据えるとあったが、目先の顧客満足とのバランスも大事かと?
A:自分のやりたいこととズレるのであれば、目先の顧客は捨てればよい。
Q:長期投資塾はAI投資などへのアンチテーゼか?
A:世間は好きにやったらよいが、我々は心のこもった投資を社会に広げていきたい。
Q:長期投資では何を最も大切と考えるか?
A:答えを知ろうとしても意味がなく、聞くのではなく自分でまず考えてみよ。
Q:長期投資において企業の決算数字と社会意義のあるビジネスとの比重はどう考えるか?
A:下品な例だが、奥さんにキスしてから抱きしめるか、その逆かと同じ類の質問だ。
Q:企業を見るうえでの判断基準は?
A:芸術や音楽が大切だと言ったことと同じだ。
Q:長期投資は理解できるものの、確率論からインデックス有利なのが悩みだ。
A:投資は社会に関わること、確率論だけでなく想いを持って考えてみよ。
Q:証券業界は手数料ビジネスで堕落しており不満、どうすべきか?
A:君はどうしたいのか。
Q:企業経営者と会う際、どのように人を見るか?
A:人は奥深く、たった一時間半の面談でわかろうとするのがおかしい。
わからないと考えるのが出発点で、だから何をわかりたいかと想いをはせるべき。
Q:計り知れない時間の経過に耐えたものが芸術だが、長期投資も耐えることか?
A:そこに好き嫌いという視点を入れたらどうなる。
Q:儲からないが社会に絶対に必要だと思う場合、長期投資ではどうするか?
A:清貧が良いのか、汚いけど豊かになりのか、ビジネスはその二択で語られがち。
長期投資では根本的にそのような考え方に支配されない。
Q:考えるために習慣づけるべきことは?
A:考えるのが目的でなはく、将来をつくっていくために考えるべきだ。
将来づくりへの思考に面白がれれば、考えることを止められなくなるはずだ。
Q:目の前の利益のみに執着する企業に、投資を通じて金を回したくないが。
A:一般的な投資では企業に金は行かない、ではどう応援するのか考えてみよ。
Q:良い企業を応援するということは、そうでない企業を市場から退出させたいのか?
A:日銀のETF買いなど市場が劣悪、市場機能が働かないなら我々がそれを担うことも。
Q:レポートとか課題提供などあれば当塾が具体的に進展すると思う。
A:我々は魂を込めて発言・運営している・・・それが伝わらないなら今すぐ出ていけ。
Q:サラリーマン経営者が多い日本、株式を自ら保有しない経営者は本気で経営できるのか?
A:ではどうすればよいと思うか考えてみよ。
Q:私の住む田舎は短い視点での問題解決をしがちだが、田舎にも長期投資は根付くのか?
A:むしろ地方の方が長期投資のメリットを果たせる・・・理由を考えてみよ。
その他。
塾後の懇親会風景



